今シーズンも大活躍の大谷翔平選手。
読書家でも知られている大谷選手ですが、日本にいた頃からの愛読書があることをご存じですか。その本は中村天風著「運命を拓く」で、その話題は数年前からマスコミにも取り上げられています。
中村天風さんは、明治・大正・昭和に多くの人々を教化した偉人で、東郷平八郎、原敬、松下幸之助、ロックフェラー三世、宇野千代、双葉山、稲盛和夫、松岡修造などの著名人にも影響を与えたといわれています。
その教えの中には健康に関するものがあり、よく噛んで食べることも指導されていたようです。
噛むことの効用は科学でも明らかになっており、全身の体力向上や活発化、唾液量の増加に伴うガンの予防、脳の発達や老化の防止、胃腸の快調化などにつながることが知られています。
天風さんは
「よく噛んで、唾液を十分に行き渡らせて小さく粉々になるまで飲み込まないようにする。飲み込むというより、気付いたら無くなっていたというのが理想的です。」と述べていました。
その効用について、天風さんはある事例を紹介しています。
激しい胃腸カタルになって、歩くこともできず、1週間も食べることも飲むことも出来なくなり、もし治ったとしても、相撲は一生取れないだろうと医者に言われたお相撲さんに天風さんは
「関取、さあこれを噛むんだ」と、たくあんを出しました。
「そんなもの、食べられません」というお相撲さんに、天風さんは
「食べろと誰がそう言った、噛めと言ったんだ。飲み込めないのなら飲み込まなくてよろしい。食道がふさがっているかもしれないから、とにかくこれを噛んでみなさい」と言い、
実際噛んでみましたが、少し経ってお相撲さんは
「飲みこんじゃいけませんか?」と言います。
「いけませんかって、飲み込めなかったんじゃないのか?おめぇ」
「なんだか、飲み込めそうです」
「ダメだ、まだいけない、噛め」
・・・・・
「まだ、いけませんか?」
「まだダメ」
・・・・
そのうちに、天風さんが「もうよかろう、飲み込め」と言ったら、
お相撲さんの口の中に、たくあんは無くなっていました。
「今まで吐いていた食べ物でも、唾を大部分にして飲み込まれた食べ物は吐かないから安心しな」
そして、天風さんの家に泊まり込み、アドバイス通りに実行したら、3週間後には四股を踏むようになったそうです。
天風さんはこうも言っています。「あれが悪い、これが悪いと気にするよりも、その食べ物や飲み物の中にあることごとくの栄養を、今まさに自分の手足の末端に至るまで、恵みとして受けるんだという感謝でよく噛んで頂くんだ。」
出展:いつまでも若々しく生きる 中村天風著